肥満筋肉摂食障害の話

 

わたしは生まれてこのかた、肥満でなかった瞬間がありません。小学校入学時は130cm30kg、周りの子よりもひとまわりもふたまわりも大きかったのを記憶しています。集合写真で撮ると1人だけ合成のようでした。そしてこれは幼稚園の時にすでに出来上がっていたものなんですが、やたら発達した筋肉、そしてしっかりし過ぎている骨格。端的に言うとガッチリデブなわけです。私は骨太だから脂肪がついてるわけじゃない!デブなんかじゃない!なんて言いたいわけじゃありません。その上から脂肪がついてるから、余計にタチの悪いれっきとしたガッチリデブです。加えて下半身デブなので、アフリカでは爆モテ委員長と化していた体型かもしれません。ですがここは日本です。完全に人生が詰んでいます。顔は顔で、出っ張りの激しい骨格とやたら発達した顔筋の上から脂肪がついているので正常状態で広瀬香美のようなほっぺですし、目は目で脂肪に埋め尽くされ、一重のつり目で朝青龍のような容貌です。

そんな人生詰み詰みルックスな私は、ずっと「女の子」になることから逃げていました。小学校卒業まで、(中学校に入ってからもしばらく)男みたいな仕草格好をしていて、一人称は俺、スカートを穿くことが何よりの苦痛だったのを覚えています。中学校受験が終わった私の体重は59kgにも達していました。流石にマズイと思い、何か変えなければ!と思い立った私は、剛毛癖毛のくせにショートカットにしてアフロのようになっていた髪を縮毛矯正でやたら直毛の薄っぺらい(それはそれでキモい)ショートヘアへと変貌させ、中学生活が始まります。

 

そんな、犬のションベンがかかった道端の雑草のような私にもついに転機が訪れます。V系バンドとの出会いです。所謂バンギャになったというわけです。美しい男性と美しい音楽に触れて、突然私は自分のことが恥ずかしくなりました。私って生物的には女の子のはずなのに、こんな醜いおっさんみたいな身なりでいいの?!!死ぬ前に可愛い服とか着てライブに行きたいし、あまりの可愛さにメンバーに目をつけられ、お付き合いしたい!なんて気色の悪いことを考え始めました。

愚かな美意識が芽生え始めた私の最初の努力は、髪を伸ばすところからでした。とにかくロングにして前髪を作ってアラを隠せばシルエットだけ見たら女の子に見えるはず!そう思ってとにかく伸ばしました。髪の癖も伸ばしたことでだいぶ解消され、髪型はなんとか女の子になれました。

次はメイクです。ロクに化粧などしたことない私は、とりあえず塗って塗って塗りたくってみました。想像してみてください、その容貌はジョン・ゲイシーさながら、ITに登場するペニーワイズです。そんな悲しきピエロも化粧をする中で一重(に見える奥二重)がどれだけ不利であるか気付き始めました。とにかくパッチリ幅広並行二重にしよう!!!と、日中はアイプチやらアイテープで丸わかりなほど瞼を固定して、夜寝る時も業務用両面テープで瞼を固定して寝ました。瞼が荒れることなど日常茶飯事、出血することすらしばしばありました。そんな実際に血の滲む努力の結果、2年ほどでやっとボンヤリした二重のラインを手に入れました。(目に変な力を入れないと完全に一重でしたけどネ)

 

そしてやっと自分の中で最大にして最難関の問題と直面します。この体型です。なんとかして痩せなきゃ、ガリガリになるのはきっと無理だから、こじはるみたいな女の子らしいラインのある柔らかそうな体型になりたい…!そう決心した私は、とにかく食事制限と下剤と嘔吐とほんとにちょっとした筋トレを駆使してダイエットを始めました。下剤は日常的に飲み過ぎて8錠飲んでも効かなくなったりしました。今でも使っていますが、飲み過ぎは良くないです。ほどほどにしましょう。無理なダイエットの結果、59kgほどあった体重が1ヶ月やそこらで51kgになりました。うわー!嬉しい!痩せた痩せた!その時期は毎回体重計乗るのがとても嬉しかった覚えがあります。

しかしながら弊害のないダイエットなどありません。食べたら吐く、という癖のついた私は右手に吐きダコができてしまいました。そして、栄養失調状態によって肌はボロボロ。ニキビが酷くて酷くてもうどうしようもありませんでした。最初に説明したように、私は骨格の問題があり、肋骨があまりに大きいため痩せるとすぐ丸見えになってしまうのです。過食嘔吐などで浮腫んでいるので相変わらず下半身はパンパンで、痩せたものの身体の造形はちっとも美しくありませんでした。そしてなんといっても一番の弊害は、免疫力が死ぬほど落ちたことでした。元より見た目に反して身体がそんなに強くない私は、無理なダイエットによりちょっとやそっとのことですぐ胃を悪くし、貧血も頻発して常時フラフラしてました。そんなダイエットは続く筈もなく、すぐリバウンドをしてしまいました。当たり前です。

 

あの当時の私は完全に摂食障害です。あの時のせいで、未だに吐く癖はやめられません。肌がボロボロになったこと、体調を崩したこと、それも辛かったですが、今あの時のことを考えて何が一番辛かったかというと24時間美容のことしか考えられなかったことです。授業中もこっそり机の下でケータイで美容板を覗き信用性のない情報を必死に詰め込み、鏡を机に置いて二重のラインを指先で1時間以上も弄っていたこともあります。はっきり言って異常でした。美醜に囚われて、変な化け物が作り上げられてしまったのです。その時の努力が無駄だったなんて決して言いませんし、今の自分の土台になってくれているので感謝の念もありますが、醜形恐怖を拗らせた元凶も、その時の私です。授業中、素人の信ぴょう性のない美容情報をネットで搾取してる時間で、ちゃんと勉強しておけば良かった。怪しいダイエットサプリのレビューを全て読み漁っている時間で、本を読めば良かった。あの時の私は、肋骨の厚さに反して本当に本当に薄っぺらい人間だったなと思います。

 

好きな人に「10kg痩せろ」と言われたことで、そんな過去の後悔とボロボロ出てきて、トラウマも蘇り、すっかり鬱状態です。10kg痩せないと得られない愛ってなんなんでしょうね。太ったらまた嫌われてしまうんでしょうか。大好きで仕方ないので、強迫観念で頭おかしくなりそうです……。話を戻しますが、これからは、今度こそは、自分の意思で、正しい情報を手に入れて、健康的な痩せ方で痩せようと思います。みなさんも摂食障害にはお気をつけを